100円FMラジオをワイヤレスマイクに

2004-12-06

★『CQ ham radio』 2005年1月号の「読者の製作実験室」に掲載されました。

ダイソーの100円FMラジオを使って作るワイヤレス・マイクと
ワイヤレス・モールス練習機

 「ダイソー」の100円FMラジオのケースとプリント基板を利用して、FMワイヤレス・マイクと、FM電波で飛ばす
モールス符号練習用のモニター音発振回路を組み立ててみました。
ワイヤレス・モールス練習機は「F2」電波を飛ばし、ラジオを使ってモールスの聞き取り練習をしようというのが
目的です。
FMラジオの基板と、部品として実装されているバリコンやボリューム、一部のコンデンサやコイルをそのまま
利用します。

※これらを製作してから月日も経ち、残念なことに、現在、ダイソーの100円ラジオは入手難になっています。
 近所のダイソーにはFMタイプ、AMタイプとも在庫がありません。
 「300円ラジオ」に代わっています。
 ちょうど良い大きさのケースで、ちょっとした小物を組み入れるのに最適なのですが、
 売っていなければどうしようもありません。

※大きな画像があるので、表示に時間がかかるかもしれません。

さまざまな100円ラジオ
いろいろな色(パネルのシート)のがありますが、中身は同じです。
左端のがAMラジオで今回の工作はFMラジオを使います。


100円FMラジオの中身。 右側の電池ボックス部に単4電池が2本入ります。

100円FMラジオ基板裏側の様子。

片面基板なので、簡単に部品が外せます。

取り外した部品。
イヤホンジャック、ボリューム、バリコン以外の部品を外します。
再利用するものもあるので、失わないように。


ワイヤレスマイクの製作


 バリコンとボリューム、イヤホン・ジャック以外のパーツを取り外します。
コンデンサやコイルなど再利用する部品もありますので、ていねいに作業しましょう。
 元のFMラジオとはまったく別の回路を組み立てるのですから、基板そのままでは使えません。
パターンカットと部品挿入のための穴開け加工、レジストの剥離とジャンパーを施さなくてはなりません。

 製作するFMワイヤレス・マイクの回路を下にに示します。
TR1でクラップ発振回路を組み、TR2をバッファ・アンプにして、リード線を使ったアンテナで電波を飛ばします。
TR1とTR2はftの高い2SC1923(東芝)を使います。2SC1674、2SC1906、2SC2668、2SC2786が代替品です。

 発振回路のコイルL1は、元のFMラジオの入力同調コイルL4です。
元の局発コイルL1は、同調周波数調整のためにへしゃげられたりしているので、形状のきれいなL4を実装します。
 バリコンで発振周波数を可変できるようにしています。
ただし、可変範囲がFM放送周波数帯より低め(62MHz〜89MHz)になってしまいました。
コイルの巻き数を少なくすれば調節できます。

 共振回路とC1で結合した可変容量ダイオードD1でFM変調します。
トランジスタのコレクタに同調回路を入れたコルピッツ発振回路では、ベースバイアスを変えるとCobが変化する
ことでFM変調がかかります。
しかし、クラップ発振回路ではベースバイアスを変えても周波数変化はほとんどありません。
抵抗を通してベースに低周波信号を入れると、きれいなAM変調がかかるくらいです。
電源電圧の変動にも強くなっています。
 バッファアンプのコレクタにインダクタ(L2)を入れていますが、共振させているわけではありません。
リード線を使ったアンテナも、DCカットせずコレクタからそのまま引き出しています。


 コンデンサ・マイクをイヤホン・ジャックから入力できるようにします。
R6がマイクのDCバイアスの抵抗です。
ジャックの外周部がGNDとなるようにパターンを変えなければなりません。
元のラジオ回路ではジャックの外周は電源につながっています。
 捨ててあったラジカセから回収したコンデンサ・マイクを試してみましたが、アンプなしでは
感度不足でした。
そこで自己バイアス増幅回路の簡単な低周波アンプを一段入れることにしました。
30dBくらいの増幅度です。
 HiFi化のためにはプリ・エンファシス回路(単純なCR回路)を入れて高域を持ち上げなければなりません。
しかし、部品を実装するスペースがないのでそのままになっています

◆部品リスト

★印:再利用するFMラジオ基板の部品

部品番号 部品名
C1,C2,C6
C3   
C4   
C5   
C7   
C8   
C9,C10 
C11,C13
C12  
C14  
D1   
J1   
L1   
L2   
R1,R5 
R2,R3,R9
R4   
R6   
R7   
R8   
TR1,TR2
TR3  
VC1  
VR1  
---  
---  
5PF    
10PF    
18PF    
33PF    
103    
100UF   
223    
104    
102    
102    
1SV101   
JACK    
COIL    
2.2UH   
47K    
10K    
1K     
2.2K    
470K    
4.7K    
2SC1923  
2SC1815  
VC     
VR50K   
---    
---    
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
電解コンデンサ      
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
セラミックコンデンサ   
可変容量ダイオード    
イヤホンジャック     
空芯コイル        
インダクタ        
5% 1/8W 抵抗       
5% 1/8W 抵抗       
5% 1/8W 抵抗       
5% 1/8W 抵抗       
5% 1/8W 抵抗       
5% 1/8W 抵抗       
NPNトランジスタ     
NPNトランジスタ     
バリコン         
スイッチ付ボリューム   
コンデンサマイク     
イヤホンプラグ(モノラル)
3  
1  
1  ★
1  ★
1  ★
1  ★
2  ★
2  ★
1  ★
1  
1  
1  ★
1  ★
1  ★
2  
3  
1  
1  
1  
1  
2  
1  
1  ★
1  ★
1  
1  


キースをフタしたワイヤレス・マイク。
イヤホンジャックの先に小さなコンデンサマイクを付けています。
黄色のリード線はアンテナです。

ケースのフタを外したところです。

部品面の様子です。
元の部品配置とは根本的に異なりますので、プリントパターンをよく見て組み立ててください。

 バリコン周辺のパターンは全部GNDにしています。
バリコンの横、可変容量ダイオードまわりの部品取り付けのためにパターンカットと穴開けを行っています。
スイッチ付きのボリュームはそのまま活かし、電源スイッチと変調度調節ができるようにしています。


部品面の様子です。 部品実装には十分注意してください。


ボリュームのダイアルを取り付けたところです。



◆ワイヤレス・モールス練習機の製作

 高周波部分は上のFMワイヤレス・マイクと同じです。
マイクアンプを低周波発振回路に置き換え、イヤホン・ジャック入力でキーイングします。
回路図と外観を下に示します。


 モニター音にはやはり正弦波を使いたいところです。
できるだけ少ない部品でということで、位相発振回路を使うことにしました。
約800Hzを発振させます。
 エミッタを直流的に断続させてキーイングします。
キークリック対策としてC12を付加すると、発振波形の終端部をなめらかに減少させる効果があります。
オシロスコープ波形をご覧下さい。
上段が発振出力、中段がFMラジオのスピーカーから出た受信波形、下段がキーイング波形(Lでオン)です。

キーイング入力と発振波形、ラジオからの再生波形です。
立ち上がり部分を拡大してみています。

周波数は約800Hzです。
波形がオフになる部分の拡大です。

キーイングオフからおよそ10msかかって波形がなめらかに減少している様子が見えています。

 電源電圧が低くなったときにも安定して発振させるのに苦労しました。
TR3のベース・バイアス抵抗R8とR9の値でずいぶん様子が変わります。
電圧が高くなっても発振しなくなります。
現在の定数で発振最低電圧は2.4Vで、電池で運用する電圧範囲は大丈夫です。

部品リスト

★印:再利用するFMラジオ基板の部品

部品番号 部品名
C1,C2,C6
C3
C4
C5
C7
C8
C9,C10,C18
C11
C12
C13,C14,C15
C16
C17
C19
C21
C20
D1
J1
L1
L2
R1,R5,R9
R2,R3,R12,R13
R4,R11
R6,R7
R8
R10
TR1,TR2
TR3
VC1
VR1
---
---
5PF
10PF
18PF
33PF
103
100UF
223
100UF
4.7UF
103
1UF
221
102
102
104
1SV101
JACK
COIL
2.2UH
47K
10K
1K
15K
62K
2.2K
2SC1923
2SC1815
VC
VR50K
---
---
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
電解コンデンサ
セラミックコンデンサ
電解コンデンサ
電解コンデンサ
マイラーコンデンサ
電解コンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサ
可変容量ダイオード
イヤホンジャック
空芯コイル
インダクタ
5% 1/8W 抵抗
5% 1/8W 抵抗
5% 1/8W 抵抗
5% 1/8W 抵抗
5% 1/8W 抵抗
5% 1/8W 抵抗
NPNトランジスタ
NPNトランジスタ
バリコン
スイッチ付ボリューム
小ユニバーサル基板
イヤホンプラグ(モノラル)
3  
1  
1  ★
1  ★
1  ★
1  ★
3  ★
1  
1  
3  
1  
1  ★
1  ★
1  
1  ★
1  
1  ★
1  ★
1  ★
3  
4  
2  
2  
1  
1  
2  
1  
1  ★
1  ★
1  
1  


◆組み立て

 位相発振回路は別基板に配線します。
FMラジオ基板の改造と配線が終わってから、FMラジオ基板の横に並べ、電源とGNDラインのパターンを使って
渡り配線して固定します。

基本的な部品配置は上のワイヤレス・マイクと同じです。


パターンカットやジャンパーもワイヤレスマイクとほぼ同じですが、微妙に異なりますので
注意してください。
移相発振回路はユニバーサル基板を使って組み立てます。

移相発振回路の様子です。


基板パターン面のパターンカットと、レジストはがし、穴開け位置を示しています。


別角度から見たところです。

◆動作チェック

 ボリュームを回して電源スイッチをオンすると、キーイングしなくてもキャリアが出ます。
FMラジオのチューニング・ダイアルを80MHzくらいに固定しておき、バリコン軸をゆっくり回し
発振側の周波数を変えて電波が出ているのをチェックする方法がわかりやすいでしょう。
 電源電圧を変えた時のFM帯発振周波数の変化と消費電流の変化を下の表に示します。
0.2Vの変化で40kHzほど変動しています。3Vのときの消費電流は約8mAとなっています。
 電源電圧が下がってくると、キーイングしたときの低周波発振音が「ピーピー」ではなく、
発振ギリギリの「ヒョ・ヒョ」という音になってきます。
さらに電圧が下がると、電波は出ているのにモニター音の変調が無くなり、キークリック音
だけ聞こえるという状態になります。

◆電源電圧による周波数の変動

電源電圧 発振周波数 キーイングオン時
消費電流
キーイングオフ時
消費電流
2.4V
2.5V
2.6V
2.7V
2.8V
2.9V
3.0V
3.1V
3.2V
3.3V
3.4V
84.93MHz
84.95MHz
84.97MHz
85.00MHz
85.02MHz
85.04MHz
85.06MHz
85.08MHz
85.10MHz
85.12MHz
85.14MHz
 6.2mA
 6.5mA
 6.9mA
 7.3mA
 7.7mA
 8.1mA
 8.4mA
 8.8mA
 9.2mA
 9.6mA
10.0mA
 5.8mA
 6.2mA
 6.5mA
 6.9mA
 7.2mA
 7.5mA
 7.9mA
 8.2mA
 8.6mA
 8.9mA
 9.3mA


 バリコンを活かしたので、手軽に発振周波数を変えることができるので便利です。
しかし、このバリコンに向かって大声で語りかけるとFM変調がかかり、ラジオから
声が聞こえます。まさにコンデンサ・マイクです。
 部品さえあれば2〜3時間で完成できます。
それほどたいそうな改造なしで元のFMラジオ基板が使えます。
100円ラジオを使った電子工作、どうぞ楽しんでみてください。


◆ウィーンブリッジ発振回路

 上の製作では移相発振回路を使いましたが、当初はウィーンブリッジ発振回路を使おう考えていました。
しかし、部品が多くなり小基板に実装できませんでした。
この回路は2.0Vくらいから発振を始め、電圧が上昇しても出力レベルが一定です。
抵抗内蔵トランジスタを使ったキーイング回路でキークリック対策がうまくできます。


 (2SK30AにD、Sの端子を記入しました。    2005-08-16)


発振波形はこんな感じになります。

立ち上がりも、立ち下がりもなめらかになり、キークリック音を感じません。