2009-08-31



◆抵抗を1本けちって電源が飛ぶ

 パワー回路に使っている半導体、ちょっとしたミスで一瞬に飛んでしまいます。壊してしまう原因、考えるといろいろ出てきますが、過電圧あるいは過電流が代表で、発熱がきっかけになっていることもあるでしょう。具体的な装置を述べるものではありませんが、電源にまつわる体験談としてお読みください。


◎安定化電源の保護回路が飛ぶ

 シリーズ・レギュレータ方式の安定化電源を過負荷や短絡から保護するため、【図2】TR2のような電流制限回路を設けます。過負荷や短絡による電流でR1両端の電圧が大きくなるとTR2がオンし、主制御トランジスタTR1に流れるはずのベース電流をバイパスします。R1両端の電圧がTR2のベース・エミッタ間電圧となって平衡して一定電流となり、TR1を過大な電流から守ります。。
 この回路で使うTR2は、TR1のベース電流を横取りできればよいだけなので、0.1Aクラスの小さなトランジスタを使います。(2SC945や2SC1815など)これが問題を引き起こします。



◎なぜ飛ぶのか

 1Aくらいで電流制限するような回路ではなく、もう少し大きな電源、例えばアマチュア無線の無線機で使うような13.5V/5A〜10Aクラスの電源を想定してください。平滑回路には大きなコンデンサが入っていることでしょう。
 このような電源を短絡すると、R1両端の電圧が瞬間的に大きく上昇し、TR2による保護が働く前、つまり定電流状態になる前にTR2のベース・エミッタ間が破壊されてしまうことがあります。こうなると保護回路が働きません。
 偶然、TR2のコレクタ・エミッタが短絡する状態で飛んでくれれば、TR1が働かないので電圧出力が出なくなります。短絡が解消しても負荷に電圧は加わらず、電源を供給している装置は無事です。
 ところが、TR2がオープンで飛ぶと、連鎖反応的な過大電流によりTR1まで破壊されてしまうかもしれません。この時、TR1のコレクタ・エミッタ間が短絡してしまうと、出力には安定化する前の電圧が出てしまいます。短絡回復と同時に定格より高い電圧が装置に加わることになり、ダメージを受けてしまうかもしれません。



◎抵抗一本で予防

 【図3】R2のように抵抗をTR2のベースに入れておけば、R1両端に発生する瞬間的な過大電圧による破壊が防げます。一本の抵抗を付加することにより、致命的な故障が防げるのです。
 また【図4】のようにR2,R3を追加して、フの字特性が出るフォールド・バック型の保護回路にするのも手です。TR2のベースに抵抗が入り保護になります。
 電源回路に関しては、幾度となく痛い目にあっています。転ばぬ先の杖、ではありませんが、回路のちょっとした工夫、先達の知恵が装置を長持ちさせることでしょう。




◆余談:レギュレータIC「LM723」では

 汎用レギュレータIC、LM723を使った電源回路でも、同じような注意が必要です。ナショナルセミコンダクタ社の等価回路を見ると、電流リミット用トランジスタ入力には保護抵抗が図示されていますが、テキサスやモトローラの回路には記されていません。723を使って電源を作る場合、この点が不安で、念のため保護抵抗を入れることにしています。


◆入力保護抵抗が記されたデータシートを見つけました。

現在のデータシートには(TI他)こんな形で略されて描かれています。

2番ピンの「Current Limit」入力が過電流検出端子です。
NPNトランジスタのデースが直出ししているように描かれています。

昔の「NS」のデータブックを見ますと。


こんな詳細な回路が記されています。

  (クリックで拡大↑)
Q16が短絡検出保護用トランジスタで、そのベースの
R24が保護抵抗です。