※CQ出版トランジスタ技術 2009年6月号
VCO/PLL IC 4046を使った
簡単便利な0.0125Hz〜500kHz方形波発振器

2009-10-06

●外観



●配線

(ユニバーサル基板を使って手組み)



●回路図

(クリックで拡大↓)

(クリックで拡大↓)



●解説

■C-MOS 4046 VCO/PLL ICを使った方形波発振回路

●実験用に

 ちょっとした実験や機器の動作検証に便利な方形波発振器です。
周波数500kHzから周期80秒までスイッチとボリュームで可変できるようにしました。
C-MOSのVCO/PLL IC「4046」を使って可変周波数パルスを発生させ、その出力をC-MOSバイナリ・カウンタ「4040」で分周します。
 出力として3つ取り出していて、固定レベル出力、ボリュームによる可変レベル出力、そしてN-ch MOS FETによるオープン・ドレイン出力です。
乾電池3本で動作します。


●ロータリ・スイッチがあったので

 製作した動機は「12接点のロータリ・スイッチ」(日本開閉器 MR-K-112)です。
仕事で使った余りをストックしていたので、何かに利用できないかと作ってみました。
 12接点の12という数字で思い付くのがバイナリ・カウンタ4040の分周段数です。4040には12段の1/2カウンタが入っています。これをロータリ・スイッチで切り替えて、1/2・1/4〜1/4096という分周出力を得ます。


●4046はVCOとして利用

 4046はVCOとして使います。4046に装備されたPLLのためのを位相比較器は使いません。
 4046の発振周波数はC1とR1、R2の値、そしてVCOINピンに加わる電圧で決まります。
VCOINの電圧を低くすると周波数が低く、電圧を高くすると周波数も高くなります。また、C1を固定した場合、R1で最高周波数が決まりR2で最低周波数が決まります。
 VCOINに加える直流電圧で周波数が変わるので、この部分の配線を伸ばしても発振回路は影響を受けません。
周波数を微調できるように10回転型のポテンショメータ(BIテクノロジ:Model7274)を使いました。


●スタンダードC-MOSを使うかHS-CMOSを使うか

 4046の品種により、VCOIN入力電圧に対する出力周波数の挙動が異なります。
 【図2】にその様子を示します。スタンダード品だと入力電圧範囲の中央6割くらいで、HS-CMOSの74HC4046だと0V〜電源電圧の1/2くらいの範囲で直線的に変化します。
 ですので、周波数を可変するボリュームVR1には【図3】のように、電圧可変範囲を規制するための抵抗(RAおよびRB)を付加しておくとよいでしょう。
 スタンダード4046を使ったとき、図の定数で約200kHz〜1MHzの方形波が得られます。なお、バイナリ・カウンタ4040は出力駆動能力の面を考えてHS-CMOSの74HC4040にしています。


●出力回路

 12段の出力を切り替えるバイナリ・カウンタ4040の他にもう一つ同じICを追加して、さらに1/4096できるようにしました。SW2で切り替えます。1/2^24=1/16777216が最大分周比です。
 固定レベル出力は周波数カウンタで周波数を読むときなどのため、VR2による可変レベル出力は低周波発振器として使うときのレベル合わせのため、MOS FETによるオープン・ドレイン出力はリレーやランプなどをドライブしたいときに使います。
 なお、出力端子に入れた100Ωは、カウンタICの出力が直接短絡しないようにという回路保護抵抗です。本来なら一段バッファICを入れたいところですが、簡単にすませています。


●ケースに入れる

 こういった実験用回路、いつでもどこでも手軽に使えるようにするにはケースへの組み込みが不可欠です。
そして可能なら電池運用が便利です。
「タカチ」のプラスッチック・ケース「SW-125」(125×70×40mm)に組み込みました。単3乾電池3本で動作させています。
 R2の値を変えると発振周波数範囲が変化します。
用途により使いやすい値を選んでください。



◆追記   2010-01-20

 高い周波数を使おうとした場合、MOS-FET(2SK2231)のゲート容量(typ値370pF)が問題になってきます。 
現回路ではHC40404の出力で直接FETを駆動しているので、ゲート容量により波形がなまってしまうのです。
対策としてFETのゲート入力に直列に1kΩ程度の抵抗を挿入します。
どのみち、現回路ではFETのオープンドレイン出力として高い周波数のスイッチングはできないので、オープンドレインは低周波用と割り切ってしまいます。
抵抗を挿入した訂正図を下に示します。
   ※4046はHC4046に。 VR1のVcc側にも抵抗を挿入。

(クリックで拡大↓)



◆筆者のブログ居酒屋ガレージ日記へのリンク

2009年05月08日−トランジスタ技術2009年6月号
2009年10月06日−電磁カウンタでポケウォーカーを駆動