■CMOSのタイマIC LMC555を使った1A定電流電源回路
2018-11-08
●ブログ記事 (旧記事には書き込み出来ません)
・1A定電流電源回路
・1A定電流電源回路の利用法
・1A定電流電源回路ブロック図
・1A定電流回路 ケースへ組み込み
・1A定電流回路 「足」を測ってみる
・1A定電流回路 みのむしクリップを測ってみる
・1A定電流回路 「バナナ」を測ってみる
・「足」の抵抗
・基板を焼き切る!
・USB-Aコネクタの接触抵抗
●概略
直流1A出力のCVCC電源を、CMOSタイマーIC LMC555とコンパレータICを使って製作しました。
単3電池4本で電流1Aを出力します。
電池で動作するので手軽に持ち運びできます。
定電流電源をアナログ回路で組むと、出力電流がそのまま電池の消費電流になります。
単3電池にとって1Aという電流は重負荷です。
また、電池電圧と出力電圧の差で発生する電力は、熱として捨ててしまうので不効率です。
そこで、ステップダウン方式DC/DCコンバータ回路を用いることにしました。
出力電流は1Aですが出力電圧は最大で0.4Vと低いので、扱う電力は小さなものです。
コイルを使ったスイッチング電源回路を用いることで、電池の消費電流を0.1Aから0.2A程度
にできるのではないかと考えました。
外観を【写真1】に、回路のアウトラインを【図2】に示します。
【写真1】
【図2】
【図3】は555を使ったマルチバイブレータ回路です。
これでPchMOSFETをドライブし、ステップダウン・コンバータを構成します。
そして、コンパレータを使い、電流あるいは電圧を検出して発振を制御します。
555の出力をHレベル(FETはオフ)にした状態で発振を止めるため、RESETではなく、
タイミング・コンデンサCTを放電する方法を用います。
検出電流が小さい、そして出力電圧が低い時に発振が始まります。
【図4】は、電流検出コンパレータとCTの放電、そしてFETの駆動を模式図にしたものです。
●実際の回路
【図5】が電源部の主回路です。
【写真2】は組み立てた基板の様子です。
・基準電圧:1.26V出力のシャント・レギュレータを使いました。
並列コンデンサの値によって不安定になる品種もあります。
・電流、電圧設定
電流設定は10回転型のポテンショメータです。
パネルに取り付けて自由に変えられるようにしています。
電圧の設定は基板上の半固定ボリュームです。
電流値は最大1.5A、電圧は0.45Vまで設定できます。
・電流検出抵抗
若干発熱するので1Wの酸金抵抗を使っています。
この抵抗のGND側が電流電圧設定の基準点になります。
コンパレータやシャント・レギュレータがつながるGNDラインと
出力電流が流れる部分は分けて配線し、この場所で結合します。
・コンパレータ
一般的なLM393です。
出力にダイオードを入れ、CTをGNDまで完全に放電しないようにしています。
発振ができるだけ早くはじまるようにするためです。
・スイッチング部
PchMOSFETやショットキ・ダイオード、コイルなどは手持ちのパーツを用いました。
平滑コンデンサを低インピーダンス型にすると、出力に乗るリップルが小さくなります。
【写真2】
●付加回路
基本的にこの回路で定電流1Aが得られますが、あれこれと補助回路を付加しました。
・電源オン表示と電池電圧低下警報表示【図6】
手軽に使えるTO-92型のボルテージ・デテクタ(リセット)IC
が廃番で入手難です。SOT-25型のもので代替できます。
・定電流制御異常表示【図7】
定電圧制御されたときのパルス(CV側コンパレータ出力<A>)を取り出し、
LEDを光らせます。
定電流で制御されている場合、ここにパルスは出ないのでLEDは消灯したままです。
負荷抵抗が大きくなって(あるいは無負荷)設定電流が正しく流れていないという警報です。
・無負荷時の電圧上昇防止回路【図8】
短絡状態が急に外れたときの出力電圧上昇を防止する回路です。
無負荷になることで定電流制御から定電圧制御に変わります。
しかし、定電圧といっても急に電圧を下げることはできません。
そこで、一定電圧を越えた時(0.5V)、平滑コンデンサに溜まった電荷を強制的に放電します。
この回路が無いと【波形1】のように定電圧状態になるまで10mSほどかかります。
この回路を入れると、0.6V程度のピークに抑えられます。【波形2】
・パワーオン・リセット回路【図9】
電源をオンした直後、回路の状態が安定するまでFETを駆動しないようにします。
出力遅延機能付きのリセットICでCTを放電して、発振を止めます。
電圧上昇防止回路を付加する時、電源オン直後の強制放電動作を抑止できるので、
この回路があると安心です。
【図6】
【図7】
【図8】
【波形1】
【波形2】
【図9】
●制御波形
【波形3】は出力短絡状態での制御波形です。
FETのゲート駆動オン時間は約6μS。
CTの立ち上がりは9μSほどです。電流低下検出で発振を繰り返します。
負荷抵抗を0.33Ωくらいに大きくすると、定電圧制御回路が働き始めます。
その様子が【波形4】です。
定電圧側と定電流側、両方のコンパレータが働いていますが、出力電圧を抑える
制御が勝っています。
【波形3】
【波形4】
●消費電流
以下の表が、電源電圧と負荷抵抗を変えた時の消費電流です。
負荷抵抗が大きくなると、負荷としての電力が増えて電池の消費電流が
増加します。
2000mAhクラスのニッケル水素充電池で運用すれば、10〜15時間は連続で
使える計算です。
なお、無負荷での消費電流は約20mAです。
・電源電圧と消費電流 (1A定電流出力時)
負荷抵抗を変えた時の 消費電流[A] |
|||
電源(電池) 電圧[V] |
短絡 | 0.1Ω | 0.22Ω |
7.0V | 0.09A | 0.10A | 0.12A |
6.5V | 0.09A | 0.10A | 0.12A |
6.0V | 0.10A | 0.11A | 0.13A |
5.5V | 0.10A | 0.12A | 0.14A |
5.0V | 0.11A | 0.12A | 0.15A |
4.5V | 0.12A | 0.13A | 0.16A |
4.0V | 0.13A | 0.15A | 0.18A |
3.5V | 0.15A | 0.16A | 0.20A |