「経度への挑戦」 正確な時計を作る
東成図書館で見つけた「経度への挑戦・一秒にかけた四百年」。
いわゆるクロノメーターと呼ばれる高精度時計の開発物語です。
科学史本ですね。
音叉発振器や水晶発振器などの電子回路や電波を使わず、
機械仕掛けだけでどれだけ正確な時計を作れるか、18世紀
の苦労話がまとめられています。
大航海時代、自船の軽度を知るためには正確な時刻が必要でした。
緯度は北極星の高度や太陽、星など天体の南中高度を測るなどす
れば、たやすく知ることができます。
しかし、経度は簡単には得られません。
船が出発した港の経度と時刻を基準値として、天体観測による
時間のズレを計算して、自船の経度を求めなければなりません。
つまり、正確に時を刻む船上の時計が不可欠なのです。
太陽の南中時刻が、母港と1時間違えば経度で15度進んだ
ということが分かります。
その時刻を知るため、人は考えました。
一定規則で動く天体を使おう、ということでガリレオが見つけた
木星の衛星、この食を観測することにより時刻を知ろうとしたのです。
(この食の観測から、光の速度が導かれたのは有名な話です)
18世紀の初頭、経度測定の問題には当時の有名な科学者の
名が出てきます。(ハレーやニュートン、フラムスティード)
木星の食、一年に1000回程度起こるそうで、日に3回は観測
できる計算になります。
しかし、まず、夜間に木星が見えていなければならないというこ
とで、実際の船の上では使いにくいという評価でした。
それでも、陸上での経度確定には有用だったようで、当時、
不正確だった国の領土や地図が正確になったということです。
この、木星の食を利用するほか、月の位置と多天体との角度差を
正確に計って時刻を決定する月距法が開発され、陸地から離れた
船上での経度測定方法が確率されます。
これにしても月が見えなくてはならないという条件があり、新月の
頃の4〜5日は太陽にじゃまされて計測できません。
さて、この時代、正確な経度測定方法の開発に懸賞金が出るよ
うになります。
どのくらいの精度が要求されたかというと、40日間の航海で
2分、一日あたり3秒の誤差なのです。
これに挑んだのがジョン・ハリスンという時計職人です。
幾多の苦労の末、1762年、81日間の大西洋横断航海で
5秒しか狂わなかったという精度が実現されます。
キャプテン・クックの航海にもこの時計が積まれ、1831年
に出港したビーグル号には22個のクロノメーターが積まれて
いたそうです。
残念ながらこの本にはクロノメータの機構を説明した図や
写真は載っていません。(実物の外観写真はあります)
この点、機会好きのエンジニアとしてはちょっと不満です
かな。
ただ、ジョン・ハリスンの作った時計4台が、現在でも
イギリスの博物館に残っているそうです。
250年ほど前の機械が生きているというだけでも、すごい
ですよね。
ネットを探せばでてくるかしら。
※緯度経度の測定とクロのメータのお話し:
http://homepage2.nifty.com/arumukos/unnk/lngtdlttd.html
http://homepage2.nifty.com/arumukos/unnk/unncssry/jn.html
http://earth.endless.ne.jp/users/fellow/longitude.html
内部構造の解説は見つかりませんね。
※この時計のページ「さとう時計店」
http://www.urban.ne.jp/home/watchsat/
は一見の価値あり!です。 分解掃除、修理中の写真、興味深いです。
ドイツ製マリン・クロノメータの内部写真もあります。
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2005年9月22日 09時56分
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ちょっと、誤字が多いのが残念です。
本に誤植があるのかと思ったら、私の文章のことですね。(酔)
おおやけにしている文章といっても、メモみたいなものですので、きちんと推敲していません。
ガレージ仲間が帰った後、酔っぱらって書いていることもしばしばですし。
申し訳ないです。
えっと、ざっと読み直して見つけたのは
「月の位置と多天体の角度差」→「他の天体」ですな。
もうひとつが
「機会好きのエンジニア」→「機械好き」
あと、どこかしら?
この2カは後日訂正しておきます。
ご指摘ありがとさんです。
「クロのメータのお話」というのがありました。
それと、「メーター」と延ばすか「メータ」とするか、悩ましいところです。
「トラ技」に記事を書いていると、つい「メータ」になってしまいます。