ニックネーム: 居酒屋ガレージ店主
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2006年06月16日(金)
エレベータ事故:シーケンサの話
マイコンプログラムとはちょっと異なるシーケンサの世界。
昔の制御盤はリレーとタイマーのおばけでした。
生産ラインの制御など一品ものの特注制御盤では、変更・修正
のたび、想定していた予備リレーが足らなくなって、制御盤の
横壁にまで増設リレーを置くこともたびたびでした。
それがシーケンサの出現で大きく変わったのです。
使われだしたのは、1970年代の後半でしょうか。
少々の変更があってもへっちゃら。
リレーやタイマーの数、普通はまぁ気にする必要はありません。
そして、ちょうどこのころマイコンが身近になってきたのです。

シーケンサとマイコン、プログラムの考え方で大きく異なるのは
制御ループです。
マイコンはなんでもありですので、自分自身で何かを待つための
永久ループが簡単にできてしまいます。
しかし、シーケンサは順序制御でこれを行います。
マイコンのように待ちループになってしまって他の処理が走らない、
ということはないのです。

シーケンサでの処理は、
(1)初期設定 : 電源オンで勝手に行われる
(2)信号入力処理 : 内部処理
(3)ユーザープログラム実行
(4)信号出力処理 : 内部処理
 →(2)に戻る 
と、走り始めたら(2〜3〜4→2)を順に繰り返すのです。
このループ時間がシーケンサ処理の1サイクルで、10ミリ秒
程度になっています。

ここで重要なのは、2と4で一括して実行される入出力処理です。
この処理はユーザからは見えません。
タイマーなどの処理もここでされています。

ユーザプログラムが処理を行う前に外部の信号入力を確定させ、
ユーザから見て、同じ信号をどのタイミングで使っても
オン・オフは確定しているというところが重要です。
下手なマイコンプログラムでは、同じ入力ポートの信号を
使っていても、処理する場所(実行の前後)によっては状態
が変化している可能性がある、という怖い状況が発生します。

出力も同じで、ユーザープログラムが処理した結果を一括して
出力します。
プログラム実行途中で実際の出力がバタつくことはありません。
このことから、ミリ秒単位の微妙なタイミングでオン・オフを
制御するという処理は苦手です。

シーケンサのプログラムは、入力のタイミングを意識せず
に書くことができます。
しかしマイコンでシーケンサと同じことをやらせようとした
場合、十分に気を付けておかないと落とし穴にはまります。

別の場所にある処理で、処理途中に入力のオン・オフが入れ
替わったらどうなるか・・・異なる処理が行われるかもしれ
ません。

それが外乱ノイズ(電波輻射もね)のように突発的な
ものだったら再現性はありません。
入力を一括処理すれば、その中で各信号のチャタリング除去
もできるでしょう。
なお、シーケンサの場合、信号のチャタリング除去はハード的
に行われています。
マイコンをプログラムするエンジニアには、シーケンサを使った
制御を経験しておてもらいたいところです。


※古〜いシーケンサだと入出力信号の一括処理を
 していないものがあります。
 マイコンのようにダイレクトに入力して出力するという
 具合です。
 このような場合は、シーケンスの最初で入力を取り込んで
 補助リレーにコピーしておき、いろんな処理は補助リレーを
 使うという手順にします。
 マイコンプログラムでシーケンス制御をする場合、あれこれ
 特殊な状況を考えておかないと痛い目にあいますゾ。

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2006年6月16日 09時45分 | 記事へ | コメント(2) | トラックバック(0) |
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 TBありがとうございました。お話の内容はよく分かります。さらに相手が機械もの(メカ)ですと、時間的な誤差は秒単位に至ることも決して珍しくなく、そのあたりも考慮に入れなくてはなりませんね。今回のエレベータ制御にしても、閉じかけたドアを開けたときに、ドアが開きだしたにもかかわらずカゴが上昇を始めるなんてシーンが生々しく放映されていますが、あれなどはまさに下間さんがご指摘する内容、さらに「相手がメカである」点への配慮が欠けていたからではないかと想像しています。

(っというか、扉のリミット入力なんか最優先、インターロック扱いにしろよな…あり得へん)

 別件ですが、小生が属している業界では、リレーシーケンスでさえも「馬鹿げた」ものが製品としてちょくちょく出回っています。まぁ、だからこそ小生のようなものにも仕事が回ってくるのですが。少なくとも、現場や機器を知らない人には図面を引いて欲しくないですね。

 さらに別件ですが、エレベータ制御をリレーシーケンスで考えてみると、かなり歯ごたえのある教材になりますね。2階建てでしたらまだそうでもないのですが、5階建てぐらいで早くもこんがらがってきます。一度お試しあれ(^^)
エレベータの制御、けっこう難しいものです。
ハード的には:
(1)カゴにある行き先スイッチ入力と現在階表示。配線距離が長くなるので、電線本数を多くしたくない。どうしたものか。シリアル通信を採用するとしたらその信頼性。
(2)階が多くなると、ともかくスイッチやランプ、センサーの数が膨大になる。
てなところです。
ソフトのほうもたいへん。
2台のエレベータを最適運転するとしたら、それはもうえらいこっちゃ。

そうそう。シーケンサの勉強課題で相談を受けたとき、よく言うのが信号機です。
まずとりあえずが赤黄青3つのランプの時間制御。
次に交差点で交わる信号機を増設。
そして歩行者用信号灯を増設。
ここでランプの点滅処理が入ります。
ここまではリレーとタイマー、カウンタの組み合わせです。
次に歩行者の夜間押しボタンスイッチを付けて、通常動作と違う処理を平行して行い、メイン処理のタイミングとどう合わすか悩んでもらいます。
ここまでできれば、たいていのリレー制御をまかせて大丈夫です。

もうひとつ。
「シーケンサの素」のような1ビットCPUがありまして、1970年代後半〜80年代に制御の分野で使われておりました。
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=MC14500&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
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